top of page
執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

健診で認めた猫の尿管結石

更新日:2020年3月24日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は猫の尿管結石について症例を踏まえ、紹介します。


尿管結石とは

腎臓で作られた尿は、尿管を通って、膀胱に貯められ、膀胱から尿道を通って体外へ排出されます。この尿の流れる通路を尿路と呼び、その尿路に結石ができる病気が尿路結石症です。このうち、腎臓から膀胱までの尿管に結石が詰まることを尿管結石と言います。

上部尿路結石のうち、大部分は溶解させることができないシュウ酸カルシウムが原因と言われています。

尿管結石は、人ではKing of painと言われており、背中やお腹に強い疼痛を引き起こします。疼痛によって食欲不振や活動性の低下や血尿が認められ、完全な尿管閉塞によって腎機能が低下すると、腎不全に伴う嘔吐、多飲多尿がみられます。


治療には内科療法と外科治療があります。

内科療法には、輸液療法や利尿、結石予防の食事療法がありますが、猫の約10%にしか効果がないと言われています。


外科治療には、通常わずか0.4mmの尿管切開による結石除去と、腎臓チューブと膀胱チューブを設置して人工的な尿管を作成するSUBシステムなどがあります。

尿管切開による結石除去の合併症は、尿管切開部分からの尿漏出に伴う腹膜炎や再発性閉塞などが40%で起こり得ると報告されています。

SUBシステムでは、上部尿路感染やカテーテルの石灰化が起こる可能性があると言われており、術後は定期的なカテーテル洗浄が必要です。

長期的な治療成績の報告がまだ少なく、当院ではまだ導入しておりません。



ここで、症例について紹介します。


症例:猫マンチカン、7歳、避妊♀、2.6kg


この症例は当院の健康診断シニアコースでたまたま左側尿管結石が見つかりましたが、3か月前から食欲にムラがあるとのことでした。


エコー検査:左側腎盂の拡張(0.5cm大)、左側尿管軽度拡張、尿管結石(0.15cm大)が1個認められた


尿検査:細菌感染、血尿、炎症

血液検査:特に異常認められず


上記の検査から、腎機能の明らかな低下は認められず、結石による明らかな閉塞も認められないことから内科治療を行いました。


内科療法:輸液療法、抗菌剤、結石予防フード(マルチファンクションシリーズ:pHコントロール+満腹感サポート)


1週間で結石は、尿管から膀胱への入り口付近まで移動し、2週間で無事尿管内から排泄されました。


エコー検査(治療開始1週間後):結石は膀胱への尿管開口部まで移動


エコー検査(治療開始2週間後):腎盂の正常化と結石の消失を確認


尿路結石の報告からすると、内科治療による有効性は10%程度しかありませんが、この症例は運よく尿管結石を排泄することができました。今後は再発に注意しながらモニターしていくことになります。何より健康診断で早期発見・早期治療できたことがこの症例の予後を大きく改善したと感じます。

お家でまったり♪


健康診断で健康を確認すること、病気の早期発見、早期治療することの重要性を今後皆様に把握して頂ければと思います。


以上です。

閲覧数:561回

最新記事

すべて表示
bottom of page