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執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

小型犬の骨折(橈尺骨遠位)

更新日:2021年2月13日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は小型犬で時折起こる橈尺骨遠位の骨折について紹介します。

術中写真が苦手な方は、注意して下さい。


橈尺骨とは

前腕の肘から手首までを構成する2本の骨(内側:橈骨、外側:尺骨)をいいます。

小型犬の骨折でも比較的多い橈尺骨の骨折は、さまざまな治療法があり、術後の合併症も起こり得る厄介な病気です。

小型犬では骨の周りの筋肉や皮下脂肪などの軟部組織が薄いため、血流量が多くありません。そのため、術後の回復に問題が生じ、骨折部位の癒合不全や骨萎縮など合併症が起こる可能性があり、手術方法の選択と術後管理には注意が必要です。


ここで、症例を紹介します。

症例:小型のMix犬、5ヶ月齢、♀、2.2kg

主訴:ソファから飛び降り、着地に失敗して、強い疼痛と跛行


x線検査:左側橈尺骨遠位で横骨折を認めた


治療法はいくつかありますが、飼い主様にそれぞれに利点・欠点をご理解頂いた上で、治療法を決定しました。


治療:ピンニング法+ギプス固定

骨折部位は、周辺の血管の損傷や過度な軟部組織の剥離を可能な限り、避けてアプローチします。

橈骨の骨髄腔は最も狭い所で1x1.5mmであり、0.8mm径のキルシュナーピンを選択してピンニングを行いました。

ピンニング法のみでは骨折部位の不安定性が懸念されるので、ギプス固定も併用し、1-2週間は安静、その後は徐々に自力歩行を再開させる必要があります。


x線検査(術後):尺骨も含め、骨折部位が整復されていることを確認

術後は手根関節の可動域が狭くなり、やや跛行があるものの大きな合併症を起こすことなく、経過は順調でした


x線検査(術後6週):順調に仮骨形成を認めた

x線検査(術後10週):骨癒合は順調


骨折部位に挿入したピンは、骨折部位のリモデリングを経て強度が十分と推定された頃に避妊手術と同時に抜く予定としておりました。

術後10週目で、ピン除去術と避妊手術を同時に行いました。念のためさらに1か月間はギプス固定を継続します。


x線検査(術後14週):ピン除去後も順調


今後は逆側の前肢も含め、再骨折に注意が必要ですが、無事元の生活に戻れると思われます。

特に小型犬にとってソファは大敵です。

自由な飛び乗り降りはさせない方が無難でしょう。


以上です。

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