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執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

猫の特発性高Ca血症に合併した急性膵炎

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、猫の特発性高Ca血症に合併した急性膵炎について症例を紹介します。


猫の高Ca血症とは

原因は、原発性上皮小体機能亢進症、慢性腎臓病続発性上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍、ビタミンDの過剰摂取、肉芽腫、特発性などがあります。

症状は、多飲多尿、食欲不振、嘔吐などがあり、重度になると不整脈、昏睡などを呈します。軽度から中等度であれば無症状の場合もありますが、腎結石、尿管結石などの尿路結石や急性膵炎のリスクが高まるため原因の追求と治療が必要です。

治療は、原因の除去、高繊維食の食事療法、飲水量の確保、輸液、ビスホスホネート、カルシトニン、コルチコステロイドなどがあります。


ここで症例を紹介します。

症例:猫、ブリティッシュショートヘアー、5歳、去勢♂、4.6kg

主訴:嘔吐と食欲不振

異物の誤飲は可能性が低いとのことで状態把握のため検査を進めます。


身体検査:口腔内やリンパ節、肛門腺など特に大きな異常を認めず


血液検査:ALT:>1000U/L、v-Lip:112U/L、Ca:15.8mg/dL、P:4.7mg/dL


エコー検査:総胆管の拡張、上皮小体は異常認めず


胸部x線検査:異常を認めず


診断:急性膵炎、重度の肝障害、高Ca血症


治療:入院下で輸液、ステロイド、制吐薬、肝庇護薬、低脂肪高繊維食の給餌

入院治療は3日間ほどで膵炎、肝障害は改善を認め、退院しましたが、その後の経過観察で高Ca血症のみ改善がなかったため、念の為上皮小体ホルモンの検査を行いました。


血液検査:intact-PTH:1.0未満pmol/L(基準値:3.1-19.8)、PTH-rp:1.3pmol/L(基準値:1.5以下)、イオン化Ca:1.83nmol/L(基準値:1.22-1.5)

上皮小体は抑制されており、腫瘍の可能性もほとんどないが、高Ca血症のみがあるということがわかりました。

自宅では元気食欲もあり、処方食を継続する中、飲水量も240ml/日程度と症状はほとんどなく、それ以外にサプリなども与えていないとのことでした。

以上の経過と結果から最終的には猫で報告のある特発性高Ca血症ということになりました。


診断:特発性高Ca血症


治療:アレンドロン酸の経口投与(10mg/head/週1回投与)

自宅で投薬できる経口製剤では他にステロイドや利尿薬がありますが、長期継続すると副作用としてステロイドは糖尿病(猫で<30%程度)、利尿薬は腎障害を発症するリスクがあります。

アレンドロン酸は顎骨壊死(人で5%程度)、食道潰瘍などの副作用があるため、投薬後の飲水と口腔の経過観察が重要です。


血液検査(治療開始後):Ca:10.1mg/dL,P:3.1mg/dL


アレンドロン酸の投薬により持続的な有効性が認められました。

今後は経過観察を行いながら治療強度を漸減していく予定です。

症状がないからといって放置は禁物の高Ca血症についてでした。

以上です。

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