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執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

犬の前立腺癌

更新日:2021年8月16日

今回は、犬の前立腺腫瘍について紹介します。  



前立腺にできる悪性腫瘍は、移行上皮癌や腺癌があります。

犬での挙動は、局所浸潤性と転移性が強く、予後が極めて悪いがんとして知られています。

尿道を経由した周囲組織への浸潤、また局所のリンパ節や肺、体軸骨格への転移も高率に起きてしまいます。


現在、これといった根治を目指す治療法はなく、緩和的に治療することがほとんどですが、最近興味深い報告がなされました。  


「BRAF Mutations in canine cancers」


犬の前立腺癌と移行上皮癌は、とある遺伝子(BRAF)変異が高率に起きているという内容です。

ちなみに正常細胞では一切、変異は認められないようです。


この報告によって、BRAF変異が陽性であれば、腫瘍(移行上皮癌または前立腺癌)であることを確定診断できるようになりました。

検査方法は、採尿した尿沈渣で可能のため、低侵襲で、動物にとっても優しい検査と言えます。


また、膀胱腫瘍のBRAF変異が人と犬で同様であることもわかり、BRAF変異と悪性転換との関連が示唆されました。

 

個人的な見解ですが、同様の遺伝子変異であれば、抗がん剤感受性も同様である可能性があります。  

ちなみに前立腺癌の外科療法は、獣医療では高い合併症率の割に良くもない治療成績のため、あまり積極的には行われないのが現状です。


ここで、人での膀胱腫瘍の化学療法について、調べてみました。

人では、やはり進行度にもよりますが、手術が第一選択とされ、補助的に抗がん剤や放射線治療を行うようです。


人での膀胱腫瘍に対する抗がん剤は、ゲムシタビンとシスプラチンによる「GC療法」が最も有効とされており、やや緩和的な代替レジメンとして「ゲムシタビン+カルボプラチン療法」があるようです。

(3週毎 ゲムシタビン1000mg/m2 day1,8 カルボプラチンAUC4.5 day1  デキサメタゾン アプレピタント 輸液)


犬でのゲムシタビン+カルボプラチン療法について調べると、報告は少ないですが、ありました。


「Combined gemcitabine and carboplatin therapy for carcinomas in dogs」


(治療計画)

3週毎、ゲムシタビン2mg/kg day1,8 +カルボプラチン10mg/kg day1


いろいろな固形がんに対しての報告でしたので、全体としては明らかな予後の改善は、認められなかったようです。

しかし、転移のある前立腺癌のみ完全寛解(104日)と記載がありました。

犬の膀胱腫瘍や前立腺癌に対して、カルボプラチンやcox2阻害薬のみでも感受性があるのは確かですが、ゲムシタビンを加えることで奏功率が上がる可能性は十分に考えられます。

今後のさらなる報告が期待されます。


当院では、動物の状態やがんの進行度、悪性度、飼い主様のご希望、最新の知見などを踏まえ、より良い腫瘍科診療を目指します。


どんなに些細なことでも、ご相談下さい。

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